踊る大捜査線 the movie 3 ヤツらを解放せよ!

ゼロ年代について。86年生まれのわたしは小学生時代を過ごした90年代をキラキラしたものと捉えがち。時代がゼロ年代になったとき、期待する気持ちが薄れ、諦めとかを感じるようになった。それは何に対してって多分「音楽」というものに対してが強いのだと思う。流行の曲がヒットチャートに並ぶけれど、それに魅力を感じられず聴けなかった。それは中学生くらいからでわかりやすい例えを出すならば浜崎あゆみは嫌いだった。期待しなくなってからは自分の好きなものだけを掘り出し見つけ出しとにかく聴いた。
今のわたしがあるのは、流行し売れていたものに反発する気持ちと行動が創り上げたのだと思う。売れてるから、みんなが良いって言うから、そういうのは聴かない、良いわけがない。
A BESTそんな頑固で勝手な子どもだった自分に24歳になった今のわたしとしては、ひねくれ者もいい加減にしたらと言いたい。あんなに嫌いだった浜崎あゆみは知り合いに勧められていやいや聞いたらどんどん好きになっていった。「A BEST」は何度も聴いたし「vogue」「Far away」「SEASONS」は悲しくてとても好き。歌詞に感動、共感もし、励まされた。あゆは何を着てもどんな髪型でも似合う。可愛く、ハイセンス、エンターテイナーで多忙を極めている彼女の至るところに魅力を感じる。とても好きな女性のひとりだ。
心臓(初回限定盤)キックザカンクルーも聞かなかったくせに今となってはKREVAの音楽が大好き。去年のアルバム「心臓」は発売が決まってからずっと楽しみだった。前作のアルバムから彼には期待をしていいという確信があった。何故なら美しい楽曲を聴かせてくれるから。〝美しい〟を創り出すのは彼の魅力。こんな曲を考えるんだと期待値はどんどん上昇していった。結果「心臓」は間違いなく傑作だった。見事な曲の構成。初めて聴いた時、アルバムの初めから終わりまでずっといい曲ってどういうことだと驚きそして嬉しさのあまり、にやけた。その後NHKで彼のライブツアー特集を見た。KREVAは楽器が弾けないそうだ。ライブで1曲シンセの演奏をする為に練習を重ねていた。その映像を見たときに更に彼の才能に魅力を感じた。楽器が出来ないのにあんな素晴らしい楽曲を、作っちゃうんだなー!!!!って。

ミュージックマガジン7月号はゼロ年代アルバムベスト100[邦楽編]だった。書店に並んでからすぐに読みに行った。堂々第1位はわたしももちろん持っております、ゆらゆら帝国の「空洞です」だったのだがゆら帝のことは書ききれないので今度。
そう、ゼロ年代の邦楽アルバム。わたしが諦めを感じたゼロ年代。ベスト100を見て、ゆら帝coccoクレイジーケンバンドZAZEN BOYS相対性理論中田ヤスタカも、ゼロ年代にわたしの好きな人達が存在している。もちろん先程記した浜崎あゆみKREVAも、ゼロ年代の音楽を創り上げてきたアーティスト。彼らの楽曲をひねくれていないで早く聞いていても良かったじゃん、わたし、と思う。ゼロ年代に素晴らしい音楽があり、期待している自分もいたことに改めて気づかされた。気づいたとき諦めの感情は薄くなっていて、それはわたしにとって、嬉しいことだった。

(※そんなにネタバレはありませんが何も情報が欲しくない方は、ご注意を。)そして昨夜待ちに待った「踊る大捜査線 the movie 3」を観てきた。1も2もスピンオフ作品も全て観ていて、わたしは完全に「踊る」のファンなので観てきたと言うより彼らに会いに行って来た。もう先入観とかなんとかはあって当たり前。好き過ぎるから初日に行くんだってば。ちなみに1番好きなのどれって聞かれたら悩みに悩むけど97年の『歳末特別警戒スペシャル』かな。稲垣吾郎ちゃんの犯人役ね。何度見ても面白くて大好き。
「踊る3」そういえば2時間半。そんなに時間経ってたっけ?というくらい長さは感じず、終わってしまうのが悲しくもっとずっと彼らを見ていたかった。映画を観ながらドラマの色んなシーンを走馬灯のように思い出した。何度も涙した作品で、じんわり懐かしさを感じたと同時にやっぱり和久さんのことを思い出し、込み上げてくるものがあった。
「踊る2」はスピードとテンポを活かした展開で、「踊る1」そして今回の「踊る3」はゆっくり静かにストーリーが進んでいく。そんなふうに感じた。相変わらず〝時代〟に合ったキャラクターの登場が面白かった。
今回の音楽は菅野祐悟さんという方が担当していた。今までの「踊る」の音楽は全て松本晃彦さんが手掛けていた。松本晃彦さんの音楽は、壮大なのに繊細で大好き。「サマーウォーズ」も彼の楽曲。素晴らしかった。今回もエンディングは彼が手掛けているので感動的な音になっている。そして菅野祐悟さんにも〝時代〟を感じた。打ち込み系のテクノ調の音楽がスリルのあるシーンにピッタリとハマっていたし、新鮮だった。これからが楽しみ。
先にも書いたが、わたしは完全に「踊る」のファンであり、好きで好きで観ている。大勢の人がきっと今日も観に行っている。感想は人それぞれで当たり前だし面白いも面白くないも有りの賛否両論でいいと思う。わたしのような〝ファン〟としての過剰な期待を持ってでも〝大衆が良いというのはちょっと‥〟という感情を持ってでも〝何の先入観もなし〟というのでも、何でもいい。見る人に条件はなし、と思う。
ただ、昨夜わたしは「踊る大捜査線 the movie 3」を観て、寝不足や休みのない仕事、将来への悩み、迷い、不安など‥普段直面している様々な事柄を忘れさせてくれる時間を過ごした。考え事ばかりしている生活でこんなに解放された気持ちになったのは久々で、幸せだった。涙腺がじんわりと緩み心温まり、おかげで映画の後の1杯は美味しかったし笑顔になった。そんな夜だったのだ。