辻井伸行さん

2日間音楽を聴いていなかったので今日はいつもよりぎゅっと吸収させてもらった気がします。NHK「こころの遺伝子」で先月放送された、辻井伸行さんの特集、再放送を先程見ました。
昨年ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで日本人初となる優勝を成し遂げた辻井さん。彼の活躍はその前から日本では有名でしたが、一躍世界的ピアニストとなりました。
わたし自身、昨年、そのニュースを聞いたとき『ああ、辻井さん優勝したんだね!この人すごいよね!』という会話を家族とした程度、彼のことは何となくでしか知識がなかったのですが、いくつかのドキュメント番組を見ることが出来てピアニストとしてだけでなく、芸術家として、人として、才能と魅力に溢れる人だと改めて感じました。

※以下、枠の中は「こころの遺伝子」HPから引用。

  • ピアノは友達

1988年に生まれた辻井伸行さん。生まれつき視覚障害があった辻井さんは早くから音楽に親しみ、わずか2歳にしておもちゃのピアノを両手で弾き始めた。そして4歳のときには、旅行先のサイパンで大勢の人を前にピアノを演奏。喝采をあび、人前で演奏する楽しさを知る。

両親は辻井さんの小学校入学を機にその才能を見極めてほしいと、プロに依頼。その時、辻井さんをテストしたのが、運命の人となる川上昌裕さんだった。川上さんは東京音楽大学を首席で卒業。ウィーンへ留学するも夢を果たせず、大学の恩師の誘いで帰国。指導者の道を歩もうとしていた。辻井さんの演奏に触れた川上さんは、その才能を確信。わずか6歳の子どもの演奏とは思えない音色に驚き、魅せられる。

ピアニストとしてウィーンに残るか、違う道を選んだ方がいいのか苦悩した川上さん。そして、初めての教え子になったのが辻井さんでした。まさに運命。
また、辻井さんは赤ちゃんの頃、ブーニンの弾く、ショパンの「英雄ポロネーズ」に喜び、足でふすまを蹴っていたそうです。しかし、違う人の弾く「英雄ポロネーズ」には無反応。きっと赤ちゃんなりに『何で今日はブーニンじゃないんだよ。』と思ったのかなと、笑。ちょうどその曲があったのでどうぞ。素晴らしいです。

  • 師から贈られた忘れられない言葉

1995年春、2人のレッスンは始まった。レッスンで最も苦労したのは、楽譜に含まれる作曲家の意図や様々な記号を辻井さんにどうやって伝えるのか。川上さんはカセットテープに右手と左手のパートを別々に録音した「譜読みテープ」を作ることを思いつく。それは耳のいい辻井さんにはぴったりの方法だったが、録音には膨大な時間がかかり、時には5分録音するのに5時間かかることもあった。

川上さんは"常により大きな舞台を目指して歩み続けよう"という意味を込め、辻井さんに「器の大きなピアニストになれ」という言葉をかける。辻井さんは師の言葉に応えるように数々のコンクールを制覇。中学3年生のとき「2年後のショパンコンクールに出たい」と話し、川上さんを驚かせる。それは、これまでとは桁違いの大舞台だった。

『次は○○の〜〜という曲です。この曲は何拍子で‥』という川上さんの語りから始まり右手の一部分の音が聞こえてくる。次は左手の同じ部分、というように大変な作業を経て出来上がったテープ。それを聴いて、練習を重ねた辻井さん。テープを作る川上さんも、それを弾く辻井さんも、この言葉に尽きてしまうけど、本当にすごい。

  • 世界の大舞台へ

コンクールに向けて2人が格闘したのは、ショパンの難曲「マズルカ」。しかし、辻井さんは直前まで「マズルカ」を攻略できなかった。コンクールの開催地・ポーランドに入った辻井さんは曲の元となった民謡を踊りに出かけ、その本質を肌で感じることに。本番でようやく「マズルカ」を自分にものにし、批評家賞を受賞する。

ショパンコンクールで世界を見た辻井さんは、人間としてもピアニストとしても、さらなる成長が必要だと感じるように。音楽大学入学を機に川上さんから離れることを決める。それから2年、満を持して挑んだのが世界的なピアニストへの登竜門「ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール」。辻井さんは日本人で初めて優勝し、インタビューで「国際的に活躍できる器の大きなピアニストに……」と話した。現在、優勝者に与えられる世界ツアーのため、多忙な日々を送る辻井さん。スタジオでは思い出の曲「マズルカ」を演奏し、改めてその成長ぶりを川上さんに示した。

辻井さんは『ここまできたんだから。』『できる!』と「マズルカ」の演奏直前まであきらめず、本番を迎えたそうです。その演奏を川上さんは『さすが、やってくれるよね‥』と感動を抑えきれず聴いていたそうです。
曲を攻略出来ず、苦戦苦悩する辻井さんの姿は、この春NHKで放送された「ピアニスト辻井伸行〜心の目で描く展覧会の絵」でも見ました。ムソルグスキー作曲「展覧会の絵」、わたしの大好きなエマーソン・レイク&パーマーもこの曲をプログレッシブロックにアレンジし、演奏していますがEL&P特集はまた今度。
展覧会の絵」はムソルグスキーが友人ガルトマンの遺作展で見た10枚の絵を元に作った曲で、辻井さんはこの曲に苦戦し、ツアー中に実際に美術館で本物の絵を観に行きました。心で絵を感じ、やっと納得のいく演奏を出来た、そのような姿が見られた番組でした。
才能だけでなく、努力を重ね、壁に当たり挫折してもあきらめない、そして、楽しんでピアノを演奏する辻井伸行さん。色々なアプローチで作曲家の気持ちを感じ取ろうと、絵を観に行ったり民謡を踊りに行ったり、『肌で何かを感じること』の大事さも改めて身に染みました。
では、昨年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールでのファイナルの演奏をどうぞ。ラフマニノフ作曲、ピアノ協奏曲第2番です。

4分過ぎ位からのオーケストラの盛り上がり、辻井さんのピアノとのかけ合い、繊細で大胆な音に感動して鳥肌が立つ。素晴らしい音楽に感謝です。